猫ねこネコ
5月某日、吉祥寺の、とあるいかがわし気な雑居ビルの中に
「それ」はあった。
平素から雑誌や電車の中吊りなどで広告を見るたびに、胸は高鳴り、
ときめいていた。
ああ・・・一度でいいから行ってみたい・・・と、ずっとずっと長いこと憧れ続けていたのだ。
「それ」とは、猫カフェである。
ふはは。
猫たちに囲まれてお茶を飲めるのだ。一体誰がこんな素晴らしいことを考え出したんだろう?
はやる心を抑え、いざ潜入。
「こんなことでもなければ、絶対こんないかがわしいビルに入るなんて事ないよね~」
と、同じ猫好き同志の妹が言った。
が、ジャズクラブは、たいがいこんな感じのビルに入っていることが多く、
「そうだね」
と相槌を打ちつつ、たいして違和感を感じず脱力する。
エレベーターを降りたら、受付カウンターとロッカールームになっていた。
ん?カフェじゃないのか?
メイド風の女の子に、店内規則を教わる。
料金は1時間900円。延長した場合は、お得なパック料金が適用されるとのこと。
それから、入室の前に手を洗うように言われた。
外から病気を持ち込むな、というわけだ。
消毒液までおいてある。お客もバイ菌扱いである。
さて、両手を洗い荷物をロッカーに入れて、おそるおそるドアを開けると・・・
んでも、片足が落っこちてて、か~ぁい~
なぜかこんな狭いところに入りたがるんだよね~猫って。
この子はこのあと、この体勢のまま、しばらくずっと昼寝をしていた・・・。
この白い容器には水が入っていて、絶えずコポコポと湧き出る仕組みになっていた。
循環させて、いつでも綺麗な水を飲める様にしてある。
ペット用に、ちゃんとこういう機械があるんですね。へぇ~っと感心。
なので、ここはみんなが水を飲みにやってくる絶好のポイントなのだった。
ソファに座り、しばらく猫さん達を眺めて楽しんだあと、今度は利用客の人たちを
観察してみた。
なんといっても平日のまっ昼間である。
どうみても40代くらいのオジサンとか、(仕事はどーした?)
20代後半くらい?の太目の女の子3人組とか、(かなりオタク系?)
ソファでずっと一匹を抱いたまま眠っている女性とか、(ちょい怖・・・)
店内には色んな種類の猫じゃらしが、ものすごい数で用意されており、
かなりの手練れで扱う者、完全に猫に無視されている者、猫じゃらしの使い方を
メイド風の店員に教わるが習得できない者、やたらと他人に話しかけ語りたがるオヤジ
・・・などなど、
猫達に負けず劣らず個性豊かな人間達であった。
それにしても、「猫カフェ」の実態は、描いていたイメージとはかなり違った。
「カフェ」と言うのだから、「カフェ」風な店内を想像していた。
猫のいる喫茶店、なのだと思っていた。
だが実際は、
「猫達のための狭い託児所におじゃまして、邪魔にならないように茶も飲める空間」
なのであった。
それにしても、店員さんの、あのメイド風なユニフォームは一体何のためなのだろう・・・?
一般的に、犬好き人間よりも猫好き人間の方が、圧倒的にインドア派だと言える。
それを差し引いてみても、かなりオタッキーな匂いがプンプンした空間だった。
正直言って、ちょっと退きました・・・
とはいえ、結局一時間半も居てしまった私と妹も、やはりどこか病んでいるのだろうか・・・