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時効話

助けてもらった話です。


あれは去年だったか 東中野にある店でライブの仕事があって


うちから東中野に電車で行くのは ちょっと面倒臭いというダラケた理由で


そこへ行くときはいつも車で行っていたのだが、


当時 私はインターネットで安いコインパーキングを探すのに悦びを


おぼえていて、100円でも出費を抑えられた日には


勝利者のような気分を味わっていた。


一体 誰と戦っていたのか。 いまもって解らないが。



とにかく東中野周辺で一番安いコインパーキングを調べた私は


ご満悦で出かけた。


「ずいぶんわかりにくい所にあるなぁ・・・このへんの筈なんだけど・・・」


同じところをグルグルと何度も走って、やっとお目当ての駐車場に到着した。


安い というのには当然理由がある。


わかりにくく、利便性に乏しく、あまり人が利用しなさそうなエリアにこそ


安いパーキングは作られるのである。


当然だ。だから、店までは少し歩かなくてはならない。


少し歩けば山手通りに出るから、そこからは解るはずだった。


だが実際は、車から降りたとたん 右に行けばいいのか左に行けばいいのか


皆目見当が付かなくなっていた。


どっちが北かも わからない。グルグル回っていたから もともとどっちの方向から


来たんだったかも憶えてない。


入り時間まで あと5分を切ったところで パニックになった。


あああああ、どうしようどうしよう。道を聞こうにも こんなときに限って


誰も通らないし。少し走っては止まり また走っては戻り。


完全に路地に迷い込んでしまい、何の目印になるようなものも見つからないで


「もうダメだ・・・今日の仕事・・・ドタキャンになっちゃう・・・」


鬼の形相のリーダーの顔が浮かび


もう二度と仕事は頼まれなくなって、店には出入禁止になったところで


私の妄想は途切れた。


佐川急便の小さなワゴンが こちらに向かってやってきたのである。


「すみません!山手通りに出たいんですけど・・・東中野○丁目って・・・」


驚いたお兄さんは地図を出して調べてくれ、ますます驚いて私に言った。


「・・・ここからだとずいぶん遠いですね・・・道もわかりにくいし、

歩いたら30分くらいかかると思いますよ・・・」


ガラガラガラ・・・


私の目の前の風景が 音を立てて崩れていった。


お兄さんにも聞こえたようだった。


「・・・ひょっとして急いでます・・・?」


白目をむいて(たぶん)突っ立っている私を 気の毒そうに覗き込んで


お兄さんが言った。


「急いでます急いでるんですもう入り時間過ぎてるんです~!!」


もうすがりつくしかない。恥も見栄も捨て 半泣き状態で思った。 


この人を放しては 終わりだ。


私のミュージシャン人生を賭けて 車に乗せてくれるよう懇願した。


「いいですよ、ちょうどそっち側(店のあるほう)に向かう途中だったんで」


「!!あ、あ、ありがとうございますっっ!!」


もう涙と汗でグチャグチャだった。


車中では、ほかの佐川の車に会うとマズイのでスタッフジャンパーをはおり


念仏のように「ありがとうございます」を繰り返す 坊主と化した私に


お兄さんは とても優しかった。


日本人て優しい・・・。ここが日本でよかった。ここがアメリカだったら


身包み剥がされて 体にいくつか穴が開き ハドソン川にポッカリ浮かんで


いただろう。


30分かかる距離を 車だとアッという間に過ぎ 店の前に着いた。


「あの、うちの営業所にお礼の電話とかくれなくていいですからね(笑)

ぼく、怒られちゃうんで」


あまりに恐縮する私を見て 心配になったのか、お兄さんはこう言って笑った。


超さわやかだった。


送ったのがバレると怒られちゃうのか。そりゃそうか。


でももう、時効だから、いいよね?















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